※このブログでは『低用量ピル・超低用量ピル』のことを『ピル』と呼んでいます。
避妊目的以外にも生理痛や子宮内膜症の治療薬としても使用されているピル。
ピルに対してのみなさんのイメージはどうですか?
レディースクリニックに来院された患者様の声をお聞きすると、
様々な声をききます。
今回はピルの副作用や、よくお聞きする患者様からの質問についてお話していこうと思います。
ピルの効果については別の記事でお話ししていますので、先に読んでおくことをお勧めします。
頭痛・吐き気・不正出血等のマイナートラブル
ピルの内服を開始して1・2か月ほどは、頭痛・吐き気・不正出血等のマイナートラブルが起きやすい時期になります。
マイナートラブルは必ず出るというものではありません。まったくなにもない人、吐き気だけある人、我慢できないくらい頭痛が強く出る人、不正出血が続く人・・・個人差があります。
ピルを飲みづつけることで症状は落ち着きますが、ここで「自分にはピルと合わないな。」と断念される方もいらっしゃいます。
ちなみに、私はヤーズフレックスの3シート目の途中まで吐き気がありましたが、その後症状はなくなりました。頭痛や不正出血はありませんでした。
これは病気ではないので落ち着くまでそのまま様子をみましょう。しかし我慢できない場合は、市販の痛み止めや吐き気止めを併用してもOK!心配でしたら、あらかじめ医師に処方をお願いしていてもいいかもしれないですね。不正出血に関しては対処法はありません。飲み続けていくうちに自然に止まりますので様子を見ましょう。
ピルの副作用
続いて皆さんが一番知りたいであろう副作用についてお話します。
血栓症
血栓症とは、血液の塊(血栓)ができて、それが血管に詰まってしまう病気のことです。
【血栓症の症状】
頭 | 激しい頭痛、前兆のある痛み(頭痛が起こる前にキラキラ・チカチカと光が見える) |
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目 | 突然の視力障害(視野が欠けているところがある・視野が狭くなる) |
口 | 舌のもつれ・しゃべりにくい |
手足 | 突然の足の痛み・腫れ、手足の脱力・麻痺、ふくらはぎが赤い・握ると痛みがある |
胸 | 激しい胸の痛み、突然の息切れ、押しつぶされるような痛み |
腹 | 激しい腹痛 |
上記のような症状が出た場合は、血栓症を生じている可能性があるため、ピルの内服を中断してすぐに病院に受診しましょう。
どれくらいの頻度で血栓症になるか、皆さん知りたいですよね?
※文献から抜粋
ピルを使用していない人(妊婦を除く)は10,000人に1~5人、ピル服用者は10,000人に3~9人。
上のグラフを見てもらえればわかる通り、妊婦さんや出産後の産褥婦さんより発症する頻度はかなり低いことがわかります。
また、血栓症の発症リスクはピルの飲み始め3か月以内が一番高まり、飲み続けることでリスクは低下していきます。そのため、ピルは飲んだり止めたりせず、飲むと決めたら飲み続けることが安全につながると考えます。
水をこまめに摂取する、適度な運動をする、長時間同じ姿勢をとらないなど、血液の循環を良くすることが血栓症の予防につながりますので、意識して行動をとってみましょう!
乳がん
これはいろんな研究結果や意見があり、断言が難しいのです。
とある文献では『ピルの内服によりわずかではあるが、乳がん発生リスクを増加させる可能性があると考えられている』と書かれていたり、別の文献では『ホルモンの量や種類等を考慮すればリスクが増加しない可能性もあると考えられている』とも書かれていたり…。
いや、どっちやねん!って感じです。
断言はできませんが、総括すると、
ピルを内服することにより乳がん発生のリスクは増加する…可能性がある。
と言われています。
子宮頸がん
卵巣がんや子宮体がん、子宮内膜症等の病気の予防になるピル。
実は、子宮頸がんはリスクが上がるといわれています。
ピルの服用を中止するとリスクは低下し、10年以上でピルを飲んでいない人と同等のレベルに戻るとも報告されています。
ちなみに、子宮頸がんは『ヒトパピローマウイルス』が原因で発症します。このウイルスは性交渉で感染しますので、性交渉の経験があればだれでもリスクがあるということです。
ピルを飲んでいる方も飲んでない方も、定期的に子宮頸がん検診を受けましょう。
Q&A
ではお次に、患者様から実際に質問されたことをお答えしていきます。あなたの疑問も解決するかも!
Q1:ピルを飲むことで卵巣機能を抑制させたり、女性ホルモン量を少なくしても大丈夫なの?
A:大丈夫です!
“卵巣機能を抑制する”という言葉を聞くと心配になると思いますが、一時的にお休みさせているだけなので、ピルを止めるとまた働きだします。
最低限必要なホルモン量は維持されますので、体に悪影響は及ぼさないのです。
Q2:ピルを飲むことで生理痛・生理不順は治る?
A:ピルを飲んでいる間だけ効果があります!
これは勘違いをされている患者様が結構いらっしゃいます。ピルを飲むことで生理痛が改善されたり、定期的に生理が来るようになるため、「生理痛・生理不順が治った!」と思って、ピルを自己中断をしてしまうのです。
ピルを飲んでいる間にしか効果がありません。ピルの内服を止めれば自身の卵巣の機能に戻る=もともとの生理痛・生理不順に戻る!これを忘れないでください。
Q3:連続服用で生理を数か月こないようにしても大丈夫?
A:大丈夫です!
ピルを飲んでいない人が何か月も生理が来ないことを放置すると、古い血液を子宮の中に放置している状態になります。そのため、将来子宮体がん等のリスクが高まるといわれています。
ピルを飲むことで子宮内膜を薄く保っている状態なので、数か月生理を起こさなくても体に問題はないのです。海外では年単位で生理を起こさないタイプのピルも使用されています。
Q4:将来妊娠しにくくなる?
A:ピルの影響で妊娠しにくくなることはありません!
ピルを中止して1か月で卵巣の機能が戻って排卵する方が約6割、遅くても3か月で排卵する方が約9割といわれています。ピルを中止してからすぐに妊娠をトライして大丈夫です。
ピルの内服を止めてから生理が来ない…検査したら妊娠してた!って方も珍しくないです。
Q5:ピルはいつまで飲めばいいの?
A:ずばりお勧めは、妊娠したくなるまで!そして50歳を超えると服用禁忌になります。
ピルを飲んでいる間は、生理痛・PMS・生理不順等が改善されるだけでなく、あらゆる病気の予防にもなるため、飲んでおいて損はないかと思います。というかピルを内服している生活が快適で止めたくなくなると思いますよ。笑
ただ、金銭的に続けることが難しい、やっぱり副作用が怖い等、なにか理由があれば無理に続ける必要はありません。ピルを飲むことは義務ではないです。
またピルを服用中は、どうしても血栓症のリスクが付きまといます。そのため40歳を超えると慎重投与、50歳を超えるとピル服用禁忌になりますのでご注意を。
Q6:ピルを飲むと太るって聞いたけど本当?
A:ピルを服用することで太るということはありません。
過去に使用されていたピルはホルモン量が多く、太るといわれていたこともありました。しかし、現在使用されているピルについては、ほとんどの場合そのようなことはないと考えてよいです。
ただし、ピルに含まれるエストロゲン(女性ホルモンの一種)は、むくみやすくなる性質を持っている為、人によっては多少の体重増加はあるかもしれません。しかし、飲み続けていくことで、体が慣れて影響もなくなるといわれています。
おわりに
いかがでしたでしょうか。ピルには嬉しいメリットがたくさん存在しますが、副作用や注意すべき点も存在します。今回のお話しで、みなさんの疑問を少しでも解決できたら嬉しいです。